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大阪地方裁判所 昭和55年(人)1号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(一) 次の事実は当事者間に争いがない。

1 奥野彰美(請求者、以下彰美という)は、昭和五〇年一二月四日奥野周二(拘束者両名の長男)と婚姻し、昭和五一年八月四日奥野臣哉(被拘束者、以下臣哉という)をもうけ、奥野勇(拘束者、以下勇という)、奥野アキエ(拘束者、以下アキエという)と一緒に洲本市(勇ら肩書地)において生活していたが、奥野周二は、昭和五四年三月二四日癌のため死亡した。

2 彰美は、昭和五四年九月二日頃、臣哉を伴って大阪市にある実家へ里帰りした。そして彰美らが実家に滞在中の同年同月二七日頃勇ほか二名が実家を訪れ、彰美に断ることなく臣哉を洲本市へ連れ帰り、爾後勇およびアキエにおいて臣哉を養育している。

3 勇およびアキエは、彰美の要求にもかかわらず臣哉を引き渡さない。

(二) 当事者間に争いがない右事実によれば、勇およびアキエは、単に臣哉の祖父母という関係にあるに過ぎない者であるにかかわらず、親権者であり監護権をも有する彰美の監護の下にあつた幼児臣哉を彰美の同意をえずに連れ去り、手許に引き寄せ養育しているのであるから、特段の事情の認められない限り、臣哉は人身保護法二条にいう「法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている者」に該当し、また右拘束は人身保護規則四条にいう「権限なしにされていることが顕著である場合」に該当するといわなければならない。

(三) そこで、右の特段の事情の存否についてみるに、請求者および拘束者奥野勇各本人尋問の結果によれば、(1)勇およびアキエが臣哉に対する深い愛情を抱いている、臣哉が現在養育されている洲本市の方が彰美の居住している土地(大阪市)よりも子供を養育する場所として恵まれた環境にあるといえる点が多い等の事実が認められるが、他方、(2)彰美は愛情の点においても、また経済的にも臣哉を養育するに十分な能力を有していることが認められるから、右(1)の事実をもつて特段の事情となしえないことは明らかであり、他に特段の事情を認めうる疎明もない。

(乾達彦 井深泰夫 市川正巳)

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